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メコンオオナマズの商業ベースの輸入プロジェクト

Project Transportation of Mekong giant catfish
(Pangasianodon gigas)

メコンオオナマズ (パンガシアノドン ギガス)
学 名:Pangasianodon gigas
英 名:Mekong giant catfish
タイ名:プラーブック
分 布:タイ、ラオス、カンボジア、ベトナムのメコン川水系

淡水魚としては世界最大級のメコンオオナマズはラオス、タイ、カンボジア、ベトナムのメコン川水系の下流域に分布している魚である。
公式記録でも3メートルを超えるので恐らく現存のナマズとしては世界最大級といってもいいだろう。巨体になるからにはさぞや大食漢なのだろうと考えるが意外にもこの世界最大級のナマズは成魚になると基本的に植物食なのである。わざわざ”成魚”と断ったのは全長60cm位までは肉食性なのだがその後、植物質中心に食性が変化するのだ。
メコンオオナマズという和名は有名で熱帯魚愛好家にもその名はよく知られた存在である。ナマズの研究家として知られる秋篠宮文仁親王殿下はメコンオオナマズの研究のため何度もタイを訪問されている。
熱帯魚愛好家の間ではパンガシウス科のナマズなので「パンガシウス ギガス」と呼ぶ人もいるが属名はパンガシアノドンなので正しくは「パンガシアノドン ギガス」である。メコンオオナマズのタイでの呼び名は「プラーブック」という。
メコンオオナマズは絶滅の危機に瀕している為、国際的な保護や監視する取り組みが展開されている稀少な魚である。
例えば生息地のタイやラオス、カンボジアでは漁獲制限されており許可のない捕獲は厳しく禁止されているし、ワシントン条約では付属書Ⅰに指定され国際商業取引は全面禁止されているのだ。日本国内でも「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」で1980年11月4日より販売譲渡が禁止されている。
日本には学術研究目的でタイから輸入された個体が岐阜県の水族館「アクア・トトぎふ」と「長崎ペンギン水族館」などに数匹展示されているのみで正規に個人で飼育することは全く不可能であった。

メコンオオナマズ1成人男性と成魚の大きさを比較するとかなり大型なのがわかります

メコンオオナマズ2男性二人がかりでなんとか捕獲する

メコンオオナマズ3屈強な男性でも成魚を押さえ込むのは困難

吉報はいつも突然やってくる!?

2009年2月下旬、懇意にしているジュネーブのワシントン条約事務局関係者から「タイ政府よりメコンオオナマズの繁殖施設の登録申請が2月9日に提出された」との知らせがあった。まさに晴天のへきれきである。
このソースからきた情報には過去にも何度も助けられているし、ガセネタはなかったがメコンオオナマズについては私も全く予想していなかった種類と話であったので一応、話の裏をとることにした。

現地の養殖施設にてタイ水産庁とワシントン条約事務局に問い合わせたところ「確かに繁殖施設の登録申請の事実はある」旨の返事があり、ワシントン条約全加盟国に対し2009年5月11日までに異議があれば回答せよという通報文書が2月10日付で出されたこともわかった。
ワシントン条約では決議12.10という条項があり、ワシントン条約付属書Ⅰ該当種であっても商業目的で繁殖した個体の繁殖施設と種類をワシントン条約事務局に登録することで国際商業取引が可能となるのだ。手間はかかるがこれが唯一、合法的にワシントン条約付属書Ⅰ該当種を国際商取引する方法である。
加盟国は通報に異議申し立てがある場合、通報があった日から90日以内に意思表示をしなければならず90日以内に返答なき場合は自動的に案件が承認されるのだ。
ということは2009年5月11日までの間に条約加盟国からの異議申し立てがなければワシントン条約の規定で自動的にこの繁殖施設は登録されるわけだ。
これを聞いた瞬間、私のアドレナリンは大量放出され、すぐに繁殖場とコンタクトをとらなければと考えた。通常、通報がでた案件で異議申し立てがされることは極めて少ないのでこの申請は間違いなく受理されると私は踏んだ。

アポイントと交渉、そして契約へ…

メコンオオナマズが商業目的で流通するとなれば大ニュースである。世界で初めて合法的に商取引できるチャンスだ!! これを私がやらなくて誰がやると言う気概であった。
2月中には繁殖場の名称と住所をタイ水産庁から聞き出したが電話番号は判らないと言う。
繁殖場はタイ北部のチェンライ県にあるらしい。別のルートから繁殖場責任者の携帯電話番号が判明したので直接、繁殖場の責任者・ティヤ氏とコンタクトを取ることに成功した。
「私は貴方のプラーブックが国際登録の手続き中という情報を持っているが是非、私に輸出していただきたい」
メコンオオナマズの養殖用の野池メコンオオナマズの養殖用の野池。個体が大きくなるので施設も大掛かりだ彼は「魚は繁殖に成功しているし登録申請しているのは間違いないが許可が下りないと輸出はできない。2年以上も待っている現状でいつ登録されるか分からないので…。」と言う。
そんなこと位、こちらは百も承知である。許可されるのは5月12日以降なのだから。
彼はいつ許可が下りるかも全く知らされていないとも言った。
私が経緯を説明し「貴方のフラーブックは5月12日に承認が完了する予定ですよ」と伝えると「なぜ知っているんだ? 当事者の私でさえ聞いてないのに」と驚く。
ティヤ氏とのコミュニケーションはタイ語のみである。珍しいことではないが彼はタイ語しか話せないのだ。これはますます私にとって好都合だ。コミュニケーション言語が限られると言うことは誰かがこの仕事をやろうとしてもそれだけ制約を受ける訳だ。この点、幸い私はタイ語が話せるので他社より一歩リードできると確信した。
そのため、取引に関する交渉は比較的スムースに進んでいった。各国に対する輸出は全てレップジャパンを通じて行うという契約も調印できた。
何度目かの交渉でメコンオオナマズの価格、数量、輸出可能時期、パッキング方法、輸送方法、許可書の取扱から契約の方法まで細かく説明し理解し合うことができた。
この時点でも海外の業者・個人も含めて彼に接触してきた者は弊社以外、皆無であった。

準備はちゃくちゃくと進行

養殖に成功したメコンオオナマズ。元気に泳いでいる。養殖に成功したメコンオオナマズメコンオオナマズの産卵は6月に行われる。6月の産卵期には弊社よりスタッフ2名を派遣し、産卵シーンや繁殖状況を視察して意見交換を行った。ここでは世界的にも貴重なメコンオオナマズの産卵や成長データを確認することができた。
2009年10月20日タイ水産庁よりCITES(輸出許可書)が発給された。
ファームの国際登録番号はTH523である。これでタイから生きたメコンオオナマズを輸出することが可能となったわけだ。
日本へワシントン条約付属書Ⅰ該当種を輸入する際は経済産業大臣に輸入承認申請をして輸入承認を受けなければならない。輸入承認には「輸入承認申請書」「輸入承認申請説明書」「契約書」「輸出国のワシントン条約に係る管理当局等が発行した輸出許可書」などが必要となる。一般的に申請から許可まで概ね2週間程である。
全ての書類を準備して申請したのが2009年10月29日であった。
輸入承認は11月10日に経済産業大臣の決裁がおりた。
これで商業ベースでの輸入へ向けての手続きは全てクリアしたのである。

自ら野池に入り生体の状態を確認

出荷の準備。何度も打ち合わせ段取り通りに

メコンオオナマズの輸入パッキングの状態をチェック

メコンオオナマズの幼魚日本に旅立つメコンオオナマズの幼魚

いよいよオペレーション開始!

私を含む2名のスタッフはタイ北部のチェンライへ飛んだ。チェンライのファームはタイ水産局の元高官がオーナーであり、ティヤ氏は息子。父親はメコンオオナマズの父と呼ばれる程の権威だった。日本からは秋篠宮親王殿下も訪れている施設である。今でも毎年、秋篠宮親王殿下よりクリスマスカードが送られてくるそうだ。
ファームには大小様々な野池が掘られていて1区画75メートル× 50メートルの池には8匹の種親が飼育されていた。
今回輸入した全長20cm前後~30cmの個体は親とは別の池で畜養されており巻き網を使って捕獲した。捕獲後の個体は体表の傷や疾病を確認して輸出前の検疫槽に入れられ、1匹ずつ胸びれのトゲに樹脂製のキャップを取り付けた。これは日本への輸送中、胸びれや背びれのトゲでビニール袋が破れるのを防ぐためである。
11月19日、早朝よりパッキングを開始。午後3時30分発のタイ国際航空TG135便に搭載手続きを急いだ。午後12時17分には空港へ搬入。チェンライとバンコク国際空港の2ヶ所でタイ国政府のチェックがあり、最終的にバンコクで政府の検査官によって輸送箱へのシーリングが施され午後6時25分に最終的な輸出許可が下りたのだった。
タイ航空の旅客機一路タイから日本へ…、タイ航空の旅客機の鮮やかな尾翼タイ航空の貨物センタータイ国政府のチェックも無事終え、ほっと一息


2009年11月20日に中部国際空港へバンコクからタイ国際航空644便で空輸した。フライト時間は5時間25分ほどである。朝7時34分に17番スポットへ到着したタイ国際航空機から降ろされた魚の入った発泡スチロール25箱はすぐにグランドサービスに引き渡され日本航空の上屋へと搬入された。
日本での通関手続きを終え、いよいよ帰社。私もメコンオオナマズと共に帰国。中部国際空港には既にスタッフが待機しており合流後、通関する。輸入に必要な書類も全て揃っており速やかに通関も完了。
メコンオオナマズが合法的に商業目的で日本へ輸入できた歴史的瞬間であった。
感慨に耽る間もなく静岡市の弊社まで車を飛ばす。
静岡到着後、直ちに発泡スチロールを開けると小さな怪物たちが元気に泳ぎ回っている姿が目に飛び込んできた。この瞬間が生物を輸入している者にとって一番、醍醐味を感じるひとときだと私は思う。

静岡の会社に到着。静岡の会社に到着。輸入後、直ちに財団法人 自然環境研究センターへ「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」に基づき販売・陳列の為の登録票を申請した。
商業目的で繁殖された個体の輸入・登録は書類を全てそろえて提出すれば完了だ。
学術目的以外では入手不可能だった幻の魚をようやく日本の皆様へお目にかけることができるのだ。
輸入が出来る様になったからと言ってメコンオオナマズの希少性には全く変わりはない。
飼育下での繁殖個体が流通しただけであって野生個体の生息数が増加した訳でも絶滅の危機から脱した訳でもない。その点を是非とも念頭に置いて頂き、入手できた方は大切に飼育して欲しいと切に願う。

今回、世界初の商業ベースでのメコンオオナマズの輸送に成功したがこの成功の影にはタイの水産関係者の長年の努力とタイ政府の全面協力、輸送に関してタイ国際航空のスムースな輸送が不可欠であった。
私は引きが強いと他人からよく言われるがそうではなく情報に接する機会が多いだけなのである。毎日膨大な情報が入ってくるが今回ほど情報のありがたみと正確さが身に沁みるケースは滅多にない。この場をかりて関係諸氏に心から深く感謝申し上げる次第です。

有限会社レップジャパン
白輪剛史

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登録年月日 平成18年12月25日  
有効期間末日 令和8年12月24日 
動物取扱責任者 江崎仁